美魔女のつぶやき

阿蘇で暮らす自称美魔女の随想

意外に大切な人

以下は、西成活裕(東大教授)著『逆説の法則』からの引用です。

 

ある組織で仕事の成績が思わしくなかった人を別の部署に異動させた時の話である。彼の代わりに新人を補充して一気に業績向上かと思われたが、実は残った人の人間関係が急に険悪になって組織の生産性が大いに低下してしまったのだ。上司はその後本当に苦労して組織をやりくりしたが、なかなか元のような雰囲気には戻らなかった。これは、仕事でいい成績を挙げる、という目的ではその人はダメだったかもしれないが、組織においては人間関係の潤滑油という大事な役割を果たしていたのだ。その人はコミュニケーションが上手で、皆の間に立って職場の明るい雰囲気づくりに大いに貢献していたのだが、これは数値化による評価が難しいものであった。

この場合、目的はこの組織に二つ存在していると考えることができ、一つは仕事での成績向上であり、もう一つは職場での良い雰囲気作りというものである。しかしそのうちの成績向上という目的のみで評価してしまったために、人事異動によってもう一つの目的への貢献分をすべて失ってしまった、ということである。後になって実はその人はもう一つの目的では役立っていた、と気づいても遅かったのだ。それはまさに荘子の思想である「無用の用」ということであり、無用に見えても実は役に立っていた、という例である。