以下は、架空のお話です。
ある村に人柄の良い中年夫婦の経営するごく普通の食事処がありました。値段は手頃、味もそこそこで、村人に人気の店でした。
そこの一人息子は村では神童と呼ばれるほどで、東京の難関大学を出た後は、アメリカの名門のビジネススクールで経営学を学び、帰国後は日本の大手商社で働いていました。しかし、両親が体力的に弱って来たので、店を継ぐために帰郷。で、店の大改革に着手。
料理人は東京から評判の一流シェフを雇い入れ、建物自体もお洒落な洋館風に変えました。食材も、日本各地の安全で美味しい物に変えました。この結果、料金はこれまでの数倍となりました。「田舎に凄い店がある」との評判はあっという間に広がり、有名人もお忍びで来るほどの、超一流の名店となりました。予約も半年先まで埋まるほどの店に大変身したのでした。
この大変化に対して、村人の評価は二分されました。田舎の村に、超一流の名店ができ多くの人が日本各地から来るようになって、村が有名になったことを誇りに思う人たちと、値段は数倍になりお洒落で敷居の高い店になったことで、手頃な値段で気軽に食事ができる店でなくなったことを嘆く人たちでした。