美魔女のつぶやき

阿蘇で暮らす自称美魔女の随想

統計やデータにも要注意

日本の食糧自給率は低いと思っておられる方は多いと思います。私もその一人でした。しかし、そうとも言えないのです。以下は、少し長いですが、『疑う力』(西成活裕 東大教授  著 PHP ビジネス新書 2012年)からの引用です。

 

近年、「日本の食糧受自給率は40%」といった数字をよく見かけます。そこから「日本の食糧自給率は低い。もっと高めなければ、日本の食は危ない」といったキャンペーンが頻繁に張られたりもしていますが、その後この数字は「カロリーベース」であることが頻繁に指摘されるようになりました。

あまりに多くの学者が指摘するので、最近では農水省も「カロリーベース」という但し書きをつけるようになりましたが、じつは世界で食糧自給率をカロリーベースで出しているのは、日本くらいで、ほかにはほとんどありません。

多くの国が使っているのは「生産額ベース」です。生産額ベースで見ると、70%になります。危機感を煽って食糧自給率をもっと高めたいと思っている人たちにとっては、生産額ベースというのはあまり使い勝手のいい数字ではないのです。

カロリーベースによる食料自給率では、誰でもおかしいと感じられる数字も出てきます。例えば、2010年度を見ると、卵の自給率はわずか10%しかありません。

調べてみるとそのカラクリは、カロリーベースの場合、「餌の自給率」を含むことにありました。農水省が発表するデータには自給率の算出方法として、肉類や鶏卵、牛乳、乳製品については「飼育自給率を考慮した値」と小さく書かれています。

ニワトリの餌は自給率が10%で、後は全部輸入です。そしてじつは卵自体はほぼ100%国内で生産していますが、卵を生産するための餌を90%輸入しているから、結果としてこの計算方法では卵の自給率は10%となってしまうのです。

引用終わり

 

で、上記のような指摘を受けてか、令和元年度の農水省の食糧自給率をネットで調べたら、カロリーベースと生産額ベースが併記してあり、カロリーベースが38%、生産額ベースが66%となっていました。

よく指摘されることですが、統計やデータや調査は発表する人や組織にとって、都合の良い形で発表されていることが多い、ということです。なので、残念ながら、統計やデータや調査には要注意です。上で引用した『疑う力』の他に、私が読んで良かったと思う本です。

1.『「社会調査の」ウソ』文春新書

2.『データはウソをつく』ちくまプリマー新書

3.『統計でウソをつく』講談社ブルーバックス